虚無世界と虚偽世界
虚無世界とは生きる意味があるのかどうか全く分からない世界、ゆえにこの世界では否応なしに自らの生について考えざるを得ない世界、そして、それは絶望に満ちた世界
虚偽世界とは今のこの世界、生きる意味があるのかどうかわからない世界を一方的にあると決めつけ、決めつけたことすらも忘却している世界、ゆえにこの世界では常識を疑わず、疑ったとしても、それは幾重にも積み重なる常識の表層に過ぎず、根本的な問いにたどり着けない世界、そして、それは快楽に溺れた世界
虚無世界から虚偽世界への移行は誰も逆らうことができない潮流だろう
だけど、虚偽世界の住人はここにいるだけで、生きていないということを理解しているだろうか?
大部分の人間はもはや『いる』だけの存在だ
快楽におぼれ動物とほとんど変わらない
絶望している人間もいるかもしれない
だけど、それは虚偽世界の上における絶望だ
会社にリストラされたとか受験に失敗したとか大切な人がなくなったとか
大部分の人間は他者に話すことで落ち着いたり、煙草や酒に興じたり、何か遊びに夢中になって忘れ去る
そして、またのうのうと馬鹿みたいに絶望を忘却し、忘却していることすらも忘却して生きてく
社会に疑問を持つ人間
これはただの負け犬だ
この合理化された世界は、うまくいけばほとんど何も悩まずに幸せに生きていくことができる
疑問を持つということはこの合理化された世界で大なり小なり躓いたということだ
そして、学校教育がどうだとか、民主主義がどうだとか批判するが、何もかも浅い
そういう人間に問いたい
肝心な自分について真剣に考えたことがあるのかと
偉そうに社会に高説を垂れる人間がたくさんいるが、ここに『いる』だけの人間が何を言っているのか
自らも虚偽世界の住人でありながら虚偽世界の住人を批判する
見ていて滑稽だ
いかにストレスを溜めないか、すなわちいかに自らについて考えることを避けるかという生き方がこの世の中では推奨されている
このような人間は絶対に生きているとは言えない
この虚偽世界において、金も、名誉も、人権も、民主主義も、政治も、宗教も、神も、信念も、思想も、哲学も、科学も、家族も、愛も、友情も、自分の思考を外に向けるものだ
虚無世界と違い、虚偽世界は合理化されており、今も合理化され続けている
これは、人間の思考を奪うものだ
虚無世界へ通ずる道を閉ざすものだ
つまり、虚偽世界にあるものを利用するのではなく、人間がものに利用されるようになる
具体的には、究極的に機械が人間を操るようになるだろう
気付いていないだけで、今の世界においてもすでに人間は利用されている
そのことに気付けないのは虚偽世界の歴史が長く、虚偽世界上で誕生したから仕方がないことだ
自らについて考えようとしても考え抜くことは不可能だろう
様々な虚偽世界におけるものが氾濫しているのだから